提示

4/16

421人が本棚に入れています
本棚に追加
/712ページ
流れてきたのはジョナス・ブラザーズの歌だ。初めて彼らを知ったのはキャンプロックというDVDを見た時だ。その時はただ映画を見て音楽を楽しんでいただけだったが、つい最近、ストリーミング音楽アプリの洋楽部門で上位ランクインしているのを見つけて聴き始めた。大人になった彼らの歌はより一層かっこよくなっていた。 音楽を聴きながらいくつか気になる服やジーンズに手を伸ばしたが、結局買うことはなかった。どれもこれも似たようなデザインで面白みに欠ける。誰かが着ているような服を着るなんて個性がない。雑誌のモデルが着ている服に興味はない。彼らだって指示をされて着ているだけだ。本当にこの服が着たいのか訊いてみたら意外な答えが返ってくる可能性だってある。 伊織は店を出るとフードコートに向かって歩き出した。時刻は12時47分。確かこのデパートには白い髭を生やしたおじいさんがマスコットキャラクターのお店があるはずだ。 歩いていると前方から見覚えのある顔の男性二人と、女性が二人歩いてきた。 男性二人はそれぞれ一つずつ大きな荷物を片手に持っている。伊織は歩みを止めて表情を変えることなく彼らの様子を窺った。
/712ページ

最初のコメントを投稿しよう!

421人が本棚に入れています
本棚に追加