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「ああ…野本さん。ん…?でも、その江原さんって人、私知らない」
「そりゃ知らないだろうなぁ。あの人は警視庁の人だから」
警視庁ってかっこいい響き…と、思いながら彩羽は納得したように頷いた。
しかし、彩羽にはもうひとつ気になることがあった。
「でも…警視庁をやめて暴力団に入るって…ハードル高くない?もし暴力団の事務所とかに警察が入ったら、岳さんも捕まるって事でしょ?」
「多分そうなるかな。でもまあ…俺は犯罪には加担していない。人を殺したこともなければ怪我をさせたこともない。薬を売ったこともないしね。それに毎日ボイスレコーダーで組の人間との会話は録音してる。その録音データがあれば警察は組を潰すことができるし、悪い処分は下されないだろう」
「なんで一人で…そんな任務についてるの?誰か相談できる仲間…いなかったの?」
「相談したところでどうにもならない。俺は公安でもないし、潜入捜査は許可されてないから。先輩とは時々連絡を取ってた。頃合いを見計らってたんだ」
「頃合い……?」
「まさに今だろうな。あの事件の再捜査が行われるんだ。俺が役に立てるのは今しかない」
「なるほどね」
彩羽もまた背もたれに背を預けて目を瞑る。
「じゃあ…私も手伝わせていただこうかな」
彩羽がそう呟くと、岳は驚いたように跳ね起きた。
「ダメだ!これ以上関わるな。危険だって分かってるだろ?暴力団が関わってるんだぞ」
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