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夜中に僕は線香を持ち出した。 母ちゃんの仏壇ができてから5年になるだろうか。 だいぶ過去の出来事になってきてしまっているな。 煙がつーーっと上に上り、部屋に線香の香りが漂う 最初は夢に何回も出てきては、 泣き狂うほど悲しかったのに、今はそれほどでもない。 僕はあんまり記憶力がないから、毎年毎年母ちゃんの記憶がなくなっていく。 それが悲しかったし、何より母ちゃんに申し訳なかった。 僕は、母ちゃんが好きだった黄色い花を花瓶にさして、また手を合わせた。 俺もまた、いつかあなたの元へ行くんだろう。 けれど、僕はあなたの怒鳴り声くらいしか覚えていないよ。 笑ってしまうね。 酷い声だった。それだけは覚えてる。 ビデオくらい持ってたら、どんな話し方だったかくらい、思い出せたのに。 僕らガキは、兄弟しか撮ってなかったな。 ため息をついて立ち上がると、いつの間にか僕の横に人がたっていた。 「うわああぁぁぁ!!!」
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