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恐らく先輩は私に合わせて休憩に入ってくれた。そして私の休憩時間が少ないということは、つまり先輩も同じだということ。
「いいのよ私は。休憩取れないのは慣れてるから、栄養ドリンクもしっかりストックしてるし。あんたが休憩延ばす間にしなきゃいけないケアは教えてくれたら私がもらう」
「でも――」
「あんた一人いなくてもまだ私がカバーできる。でも私までいなくなったら回らないでしょうが。甘えられる時は甘えなさい、ひよこ」
ひよこ。磯部さんが新人の私につけてくれた愛称。そんなことも先輩は知ってくれていたんだな。
「榎本、磯部さんの死、無駄にしないでね。感じたこと全部、絶対忘れないで」
「……はい!」
もちろん、絶対に忘れない。
磯部さんと関わった日々も、磯部さんを失ったことも。
そして――篠崎先輩との今日の時間も。
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