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ひよこ
その嘘っぱちでもっともらしい理由は、自分の人生を安定に導くためのカモフラージュだった。
私が本当に看護師を目指した理由を述べれば、人間性を疑われて採用してもらえないと思ったから。だって私が面接官だったら、「血管フェチなので看護師になっていろんな角度から血管を愛でまくりたいです!」なんていう学生は即落とす。
大学選びをする高校生の時点で、自分が一生楽しく続けられる仕事は何かと考えた。だけど仕事がずっと楽しいなんて理想でしかない。それならば、辛いことに直面した時に自分を納得させられるよう、好きなものに関係する仕事をしたいと思った。
私の好きなもの――血管。
いつから何のきっかけで血管フェチになったかは覚えていない。だけど見るのも触るのも縛るのも解くのも。気づけば物凄く好きだった。学生時代から駆血帯を購入し、自宅で自分の身体を弄ぶ程には。
合法的に血管に直接触れられるのはやはり医療職だ。切ったり結んだりできる領域にもちょっぴり興味はあったけれど、血まみれになりたいわけではないしそもそも頭が足りないので医者は除外。
そして私は看護師を目指した。これまで私のフェチズムは誰にも理解されなかったけれど、病院に就職すれば同士に出会えるのではないかとも密かに期待して。
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