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「神様があなたを呪っているのよ」
その瞬間、ひどく納得した。
わたしは、神様からも愛されなかったのだ、と。救いを求めに行ったはずなのに、その救いの手からもこぼれてしまうなんて、考えもしなかった。とても浅はかで傲慢だったのだ。
わたしは幸せになれると、そう思ってしまっていたことを、ずっと恥じて生きている。
祖父が、わたしのベッドの上で仰向けになって寝ていた。退屈で窮屈な、あの檻のような空間から逃げ出したって、結局同じような場所に帰ることを強制させられるこの人生に、一体なんの意味があるというのだろう。
「……どうしたの」
久しぶりに、祖父にかけた言葉だった。声がうまく音として出ない。
ほとんど寝たきりの祖父は、自室から出てくることはなく、ようやく姿を現わすのは排泄か風呂ぐらいだった。清掃の仕事で転倒し、足を悪くしたと父から聞いたが、清掃の仕事をしていたと知ったのはこの時が初めてだった。
会話がめっきりと減っていたのはいつからだっけ。思い起こしても、記憶の片隅に残っているのは、忌々しく呪うような目だけ。わたしという存在を心の底から恨んでいたように思うし、それが妥当なのだと、今なら理解はできる。
怒りという感情だけで生きてきたような人が、ふっと拠り所を失くしたように弱っていった。今、祖父にあるものはなんだろうか。虚無だという気がするし、己の死を受け入れようとしているようにも見える。
足を悪くした祖父は、家族の人間による介護が必要となっていた。毎晩の食事、それを届けに行くのはわたしの役目だったが、起きていた試しがない。わたしと接触するのを避けているように見えた。
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