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〝──なんだそれ、笑えるな〟
スマホが小さく振動し、画面に映し出された一言に衝撃を受けた。
笑えると、あの人は言った。続けてスマホが振動する。
〝──その言葉こそ呪いにしか思えないけど〟
呪われていたのは神様ではなく、占い師だったというオチが、突然ふりかかった。
言葉が、言葉で、塗り替えられていく。真っ白なキャンバスの上に黒いインクを落とされたはずなのに、決して消えない黒を白で消されていくような気がした。
〝──そんなもんで呪われるぐらいだったら、俺が新しいを呪いかけてやろうか〟
指先が動かなかった。続けて送られる彼の言葉を待つように、画面から目が離せない。
〝──幸せにしかなれない呪いをかけるから、ちゃんと信じて〟
〝──何を信じるか、それを決める権利があるんだから〟
〝──変な占い師の言葉なんかより、俺の言葉信じてよ〟
〝──幸せに、笑顔になれる呪いを、今かけたから〟
〝──もう大丈夫〟
棘が、すっと消えていったのがわかった。痛みが噓のようになくなった。ずっと苦しんできた。もうなにをしても忘れられないものだと思っていた。
視界が歪んだ。湾曲を描いていく。
じんわりと、目頭が熱くなったのはきっと、かけられた呪いが、あまりにも優しいものだったから。
わたしは神様から呪われている。非情な人間。
そんなわたしが今、新しい呪いにかけられ、涙を流している。
輪郭を辿っていった透明な雫。それは、わたしが人間だということを、この人がまた教えてくれる。非情ね、という声が遠い底に沈んだ。
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