地球クライマックス

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 消滅の合図のサイレンが鳴ると、びくっとする。サイレンが鳴ったら五分。その五分後一度地球は消滅するのだ。心臓がどくどくと激しくなり、死を覚悟しなければいけなくなる。怖くてたまらなくなって、死にたくないと泣き叫んで、いやだいやだとこれから起こることを拒んで――それでも消滅の時間がくるのだ。その時間を、もう何十回と繰り返してきた。  だから、精神が崩壊していく。殺してくれと天を仰いで叫ぶ者までいる。絶望に満ちた顔を何度も見てきながら、また再生されてしまったことに絶望する。ああ、まだ生きてる。いや、死んだのだろうか。再生されたわたしは、もうわたしではないのだろうか。わたしという人間が、もうなんなのか分からない。 「そっちは? おばさん元気?」 「元気、絶望してたけど」  わたしの家族は、父親と兄が、もう再生されなくなった。母親は、次は自分だと恐怖に怯えている。その目を見るのが怖くてたまらない。  いつかは死ぬのだ、人間は。わたしも例外ではない。けれど、その死をこうして覚悟しなければならなくなるなんて思いもしなかった。  ついさっきそこにいた見知らぬおばあちゃんは「きっと、残される人間を見極めているのだろうねぇ」と静かにぽつぽつこぼしていた。  それは誰が? なんのために? 聞きたいことはあったけれど、聞かないようにした。  なら、残らなかった人は必要がなかったと思うしかほかないから。  わたしの父親も兄も、必要ないわけなかった。必要だった。少なくともわたしにとっては。  一人、一人と、近い人が消えていき、残った人も、次には消えてる。
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