人生かけて、追いかけて

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「木津川」  ヤツが俺の名前を呼ぶ愛想のない声に、心臓が跳ねる。 「あ?」  早くなる鼓動をかき消すように意識してドスの効いた声を出すと、いつも通りの不機嫌そうな顔で睨まれた。 「これ。汐見がテメーに渡せって」 「あー、昨日言ってたやつか。パシリおつー」 「殺すぞ」  俺らが一日に交わす言葉なんて多くてこんなものだ。仲が悪そう? 大正解。俺とアイツーー葦原はいわゆる犬猿の仲というやつだった。顔を合わせりゃガンの付け合い、口を開けば喧嘩腰。嫌味の応酬、殴り合い。  そう、俺は葦原のことが嫌いなはずだったのだ。それがどうしてーー。  「サークル費回収用」と書かれた封筒を葦原から受け取り、トートバッグの中のパソコンとファイルの間に差し込むと、ろくに挨拶もせずに教室を出る。  この気持ちには、死んでも気づかれちゃいけない。
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