飛鳥IIに魅せられて

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私は体調が悪いせいもあり、アプリで飛鳥IIの位置を追いかけ、今はここにいるのね……、と思い馳せる毎日となりました。 作中、豪華客船の船員である人物が初期のころに遠距離恋愛をしている時期があり、もしこのアプリを入れていたとしたら、日本にいる恋人はその船をこっそり登録し、きっと私のように暇さえあれば恋人の船がいる場所を確認して静かに笑っていたかもね……という妄想をしたり。 そのアプリをうっかり恋人に見つかって、自分の船が登録されてる! と知ったらどうなる? みたいな妄想すらしておりました。 そんなこんなで、飛鳥IIは私にとって、とても恋しい船となるのに時間はかかりませんでした。 そして、新型コロナウィルスが、また感染拡大をはじめたのです。 飛鳥IIは、2022年から外洋航海に出てしまいます。つまり、神戸どころか日本からいなくなるのです。 残り少ない今年と、経営さえどうなるかもわからない来年と。確実に会えなくなる再来年です。 私。 いま、飛鳥IIに会わなければならない、という焦燥に取り憑かれました。 3a5cc7e6-cc51-4e43-afba-dea9225eeb39 神戸港の入港予定を調べた際の地図です。4箇所ある中から、飛鳥IIはポートターミナル駅のすぐそばに着岸することがわかりました。 私。 電車は感染リスクが高い。 船を遠くから見るだけなら、誰にも迷惑はかからないはず。 タクシーで行こう。 幸い、国からもらった10万円を手元に残してある。 何か、どうしようもない出来事が起きたら使おうと決めていました。 いま、どうしようもないわ! どうせ見るなら、停泊しているだけではなく、動いてるところを見よう。 そして、あのダイヤモンドプリンセス号のように美しい夜間照明も見たい。 発着時刻を調べ、2020年11月28日午後5時にポートターミナル駅を出港する便にしよう、と決めました。 その間も、新型コロナウィルスは感染拡大を続け、大阪は深夜の営業自粛要請が出されました。 それでも、行くの? やめる! 行くのやめるわ! と言い聞かせるものの私は、自分が止められないことを知っていました。
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