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 私は六年生のクラスを担当することになった。この学校から巣立っていく生徒の世話をすることもあって責任重大だ。放っておいても中学校に自動的に進学していく生徒はともかくとして、私立中学への受験組(私立組)の世話もしなくてはいけない。 始めから私立組と公立組を分けてもらいたいものだが、私立組は圧倒的少数のためにクラスを分けると言うわけにはいかない。 私が見つけた「ある少年」は私立組だ。本当は幼稚園の時点で私立を受験していたのだが、受験当日になって風邪を引いてしまい、大失敗。イヤイヤながらにこの学校に来たとのことだった。本人はともかく「母親」は本気で悔しがっていたようで、これまでの三者面談で「この子はこんな公立小学校なんかに通う子じゃない」とがなり立てて歴代の担任を困らせていた。ならば編転入手続きをすればいいのにと思うかもしれないが、生憎と行かせたい私立は編転入を募集しておらず、毎年の新入生の受験の受け入れしかしてないのであった。つまり、小学校受験を失敗した時点で次のチャンスは中学受験と言うことになる。 入学式が終わり面合わせが終わったところで私は「ある少年」……  名前は家原遊児(いえはら ゆうじ)にコンタクトを取ることにした。
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