for you

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 夕方過ぎになって私立組が私のいる職員室を訪ねてきた。長い間の受験勉強が終わりファミレスで打ち上げをした後とのことらしい。 「おう、どうだった?」 全員、サムズアップを上げる。試験の出来は上々と言うことだろうか。勿論、遊児も高々とサムズアップを上げた。そして、彼らが頭の中に入れている「試験問題」と「過去問」を照らし合わせ、擬似的に今回の「試験問題」を再現し、答え合わせをする。 その最中、遊児が唐突に口を開いた。 「そう言えば、試験中断があったよ」 動いてくれたか。私は心の中でガッツポーズをした。 「そうそう、カンニングの防止とかってポケットと鞄の中を全部机の上に出したんだよ」 「問題集やノートとか全部ロッカー入れてるのになー」 「めんどくさかったよな」 「御守持ってきてる奴みんな中身改められた」 「一旦別の部屋にも持っていかれたよな」 よし、中身は見てくれたと言うことになるな。計画通りだ。まさか遠隔操作(リモート)でここまで上手くやってくれるとは…… 「何か言われなかったか? その場で退場する不届きな輩はいなかった?」 全員、首を振る。試験は滞りなく終わったということだ。 ここでフェイズ3、後始末だ。 「そうかぁ、仕方ないとは言え御守開けちゃったか…… 神様はみんなを見捨てないとは思うけど…… 買ってきた神社に神様にお礼も兼ねてお焚き上げを依頼するから返してもらえないかな? 御守」 全員、私に御守を返す。私は全員が帰った後に「標的(ターゲット)」の御守を恐る恐る開けた。気づかれていたら取り除くなりしているはずだ。中身は…… あった。 私が仕込んだカンニングペーパー、過去問から選んだ難問の解き方が書かれた紙がしっかりと入っている。一旦別の部屋に持っていったと言っていたことから「証拠」は写真なりで保存してあるはずだ。これは隠滅しても問題ないことになる。春休みのうちにお焚き上げの旅行に行くことにしよう。 私は計画の成功を確信し、口角をニヤリと上げた。そして、職員室に私以外誰もいないことを確認し、馬鹿みたいに大きな高笑いを上げるのであった。
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