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春になってもまだ寒く、あやかし駄菓子屋のストーブの周りに壱花と子ダヌキたちはたむろしていた。
「まだ、かきもちありましたっけね?」
と壱花はレジの奥の部屋を振り返る。
小腹が空いて来たので、かきもちを焼くか揚げるかして食べたいと思ったのだ。
倫太郎が答える前に、ガラリと店の戸が開いた。
「待てっ!
そのかきもちっ」
と班目人也が大きな発泡スチロールを手に現れた。
「俺がカニを持ってきてやったから。
みんな、カニを食えっ!」
おー、と高尾たちから拍手が起こる。
「いやあ、俺は無類のカニ好きでな」
と言いながら、班目がドサリとレジ台にその発泡スチロールを置くと、早速、わらわらと子ダヌキや子ギツネたちが集まり、覗き込んでいた。
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