#03-02.輝かしい未来

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#03-02.輝かしい未来

「円。おはよう」  ベッドのうえで眠る円に声をかける。うにゃうにゃ言いながら円は、「ママ、おはよう」と挨拶を返す。寝る時間を早めにしたので以前よりも朝の支度がスムーズに行えるようになった。ママと布団ではなく、ひとりでベッドに眠れるようになった。この二年で最も変化した部分だ。  田原円という漢字も書けるようになった円。朝の支度を手早く終えると円は学校、わたしは会社へと向かう。外から見ると笑っちゃうくらいのボロボロのアパート。でもわたしは……満たされている。  いつか、彼が、迎えに来るから。  あれから夫とはすぐに離婚した。いや、元夫というべきか。しなければ、会社に不貞の証拠を送り付けると脅した。前に、夫と美冬のやり取りを携帯のカメラで撮っておいたのが功を奏した。もし露見したら、課長職である彼は、職を失うとまではいかないだろうが、なにかしらのペナルティが課せられるに違いないから。――よって、紘一は渋々ながらも離婚に応じた。
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