#03-02.輝かしい未来

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 ある賞を――奥村冴子が受賞していた。どうやら漫画化されるようだ。荒木としては小説の賞を受賞したかったであろうに……ともあれ喜ばしい結果だ。二作品も出版するとなれば、それなりに知名度もあがるはず。――こころ踊る感覚とともに、わたしは布団に入った。円への――それから荒木へのあふれる情愛を抱き締めながら。  * * *  その週末。わたしは滅多に行かないカフェに顔を出した。――いた。 「あっみふゆちゃーん」会うのは二年ぶりだが円は覚えているようだ。「みふゆちゃん。このカフェで働いているの?」 「美冬さんはこのカフェのオーナーなのよ」美冬の代わりにわたしが答えた。店員に向けて、「ブレンドと、ミルクティーを」  奥で立っている美冬は曖昧に微笑むばかりだ。紘一と美冬がどうなったのか……知る由もない。興味もない。が、結婚指輪をネックレスのペンダントトップにしている辺り、新谷という男との結婚生活を続けているのだろう――と思う。 「それじゃあわたしは」と頭を下げ、「さよなら」と美冬に告げる。このカフェに来た目的、それは――。
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