第一部 乙女篤子/#01-01.そんな馬鹿な

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「二十八」 「……十歳近く離れてんじゃん」とわたしは笑った。そうでもしないと正気を保っていられないと思ったからだ。「ジェネレーションギャップ絶対あるでしょ。話、噛み合ってんの?」  夫はこの質問には答えなかった。「おれとしては……そうだな。きみのことも、円のことも、いままで通り、大切にしつつ、彼女との付き合いも……続けていきたいと思っている」 「……いつから?」 「一ヶ月前くらいに。寝た」  わたしは立ち上がり、夫の頬を引っぱたいた。そして――黙って洗面所に向かい、歯磨きをすると、娘の寝室に入り、布団に入った。  暗い天井を見つめ、ひとり、考える。――神様仏様。どうしてわたしをこんな目に遭わせるのですか。いったいわたしがなにをしたというのでしょう。――レス。不干渉。夫を構えない……そんなの、世の誰しもが経験するステージのひとつでしょう? 日本は世界一レス夫婦の多い国なんですよー。
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