#01-02.納得……出来るわけがない

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 いつも通り玄関を出て鍵をかけ、娘と途中で別れてから仕事に向かう。うちの地域は子どもだけで登校する子たちがほとんどだ。比較的小学校は近く、徒歩八分程度のところにあるのがありがたい。といっても校門まで見送ると駅から離れてしまうので、道途中で娘と別れるようにしている。通学路は蟻さんのごとく、ランドセルを背負った小学生でいっぱいだ。――さて。  気持ちを切り替えよう。  とするも、わたしのこころは堂々巡りを開始する。――夫。彼女。浮気。不倫。慰謝料。許容。謝罪……。  ふ、とひとり小さく笑った。夫が著名人だったらわたしは謝罪する立場なのだ。思えばわたしの小さい頃は、不倫は文化――とまでは言わないが、男の勲章扱いされていたというのに。とある女性芸能人の不倫騒動から、風向きが変わったように思える。会見をすれば叩かれ、しないでも叩かれる。――まったく夫よ。芸能人じゃなくてよかったな。  勤務地は二駅先で、本を読んでいるとあっという間に到着する。電車を降りるとぞろぞろ歩く大群の流れに従い、目的地へと向かう。 「おはようございます」
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