2人が本棚に入れています
本棚に追加
墓石飛び。久しぶりだ。三年とか四年のときによくやった。
お墓の周りの壁の上を走って、となりの列に飛び移ったり、地面に飛び降りたりする。場所によって簡単だったり、ぜったいに無理だったりだ。
ときどき和尚さんに見つかった。中に落ちたら地面が抜けるからな、そしたらお前ら地獄行きだーっ!と、そのたびにおどされた。家の人にはだまっててくれた。
俺たちが向かったのは墓場の一番古いあたり。昔からの大きい墓が入り組んでいる。壁の高さもそろってない。超難関コースだ。
「いくぞぉ!」
オリがとっかかりの壁に飛び乗った。身軽だ。続いて、ヒロ、カズ、ノブ、そして俺。オリが壁の上を走る。列を飛び移る。俺たちも飛ぶ。ちびの頃ぜったいに飛べなかった鈴木さんちの墓の入り口も楽勝だ。
俺たちは忍者になったつもりで墓から墓へと飛んで行った。
それにしてもオリは速い。もう石塚さんの墓だ。狭い壁の上をあんな速さで。俺にはとても――オリの姿が消えた。
「おい!」
ヒロたちも気づいて壁から通路に飛び降りた。
オリ―ッ!
叫びながら俺たちはオリが消えた墓に走った。
最初のコメントを投稿しよう!