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オリは胸のあたりまで土まんじゅうに埋まって口をパクパクさせていた。
俺たちは顔を見合わせた。場所が場所だけに笑えない。たぶん、俺たちの頭には和尚さんの説教が響いている――いいか、あの墓場の土が盛り上がったとこを見てみろ。あれは[どまんじゅう]っつってな、あの下に仏さまがねむってらっしゃる。そして見ろ!真ん中のへっこんだところ。あそこはな、土の下にうまってる棺桶がくさって地獄まで穴が通じてるところだ!――バチが当たった、呪い、たたり、地獄行き。本当だったらと思うと、恐くて口に出せない。
「動けないのか」
恐る恐る聞いた。オリはうなずいた。両手を広げて土まんじゅうの斜面を押さえている。
俺は手を合わせて――失礼します、呪わないでください――とお祈りして墓に入った。砂と土の地面がふわふわして今にも底が抜けそうだ。ゆっくりとオリに近づく。
「どうしたんだよ、オリ」
「踏み外して落ちた」
「まってろ、いま引っぱる」
俺はオリの脇の下に手を入れて思いっきり引っぱった。
ザスッ!
とたんに俺の足元が沈んだ。
ヒイーッと喉から声がもれた。
「ヒ、ヒロ」
「な、なんだ」
「和尚さんか誰か呼んで来てくれ!」
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