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前川の土手は桜が散りはじめていた。橋を渡って少し行くとオリんちだ。土手の砂利道はケツが痛い。俺たちの自転車もあちこちサビが浮いてガタがきてる。新品に乗れるまで、あと一年もたせないといけない。
ヒロとカズと、きょうはノブもいっしょだ。オリんちで遊ぶことになっていた。
門口を入って納屋の軒下に自転車を置いた。
――ふざけんな!……てめえ……わるいんだろうが……てめえのせい……!
家のほうから怒鳴り声が聞こえてきた。大人の声じゃない。そしてバスンバスンと布団をたたくような音。
「オリか?」
「兄ちゃんかも」
「どうする」
と言いながらヒロは足音を忍ばせて玄関に向かって歩きだした。
「やめろよ」
カズが小声でとめる。
「だいじょぶだって」
ヒロにつられて俺たちもコソコソと玄関にむかった。その間もバスンバスンバスンと音は続いていた。
玄関のガラス戸は開いていた。のぞきこむ。
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