恋する貧乏神

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 私は不幸な星のもとに生まれた貧乏神である。外見はとってもキュートな女の子で、性格はちょい肉食系の恋愛体質。思いやり深く、相手に尽くすタイプだ。  でも、貧乏神であるがゆえに、私は自分が好きな人を、必ず貧乏で不幸な境遇に陥れてしまう。好きな人を不幸にしてしまうなんて、これほどまでに残酷な運命を背負った女が他にいるだろうか。  自分の(さが)があまりに辛くて、私が愛したために死んじゃった彼氏が百人に達した時…(この百番目くんは、パチンコにはまって作った借金がもとで犯罪を起こして有罪判決を受けて以来、酒浸りになり、それがもとで体を壊して死んだ)、涙にくれながら神様の中の最高位の、一番尊いお方の足元にひれ伏して、衣のすそにすがりながら訴えた。もうこんな悲しいことは嫌ですって。  そうしたら、「ふむ」とその尊いお方は、首を傾げて考え込まれて、 「確かにそれは不憫な星回りじゃ。私からほんの小さな幸運を授けても、世の均衡になんら障りはないであろう」  って、おっしゃられた。  そして、小さな小さな、でも暖かく光る幸運の種をくださった。  今、それは私の一部になっている。その翌日、私は百一番目の大好きな彼氏と出会うことができた。  彼の名前はマサトくん。売れない小説家だ。作風は退廃的で暗く、ラストは必ず何の救いもない形で終わる。  まあ、小説だし、こういう作品が売れないと決まった訳ではないけれど、マサトくんの作品はどっか中途半端で浅いのだ。  しかし、私と付き合い始めたことで、彼の作品はダークな部分の描写に磨きがかかった。  そりゃそうだ。なにせ私と一緒にいるだけで、マサトくんはちょこちょこと大小の不幸に見舞われる。実際の不幸な体験と、それに伴う苦悩や苦痛が、作品に反映されるのだ。  財布を落とすなんてしょっちゅうだし、人に貸したお金は上手くはぐらかされて返ってこないし、この間は銀行のATMで現金を引き出そうとしたら、何らかのエラーでマサトくんのキャッシュカードが盗難されたカードとして登録されていて、後で家に警察の人が来て連れて行かれてしまった。  こんな体験ばかりしていたら、心がすさんで当たり前だ。しかし、マサトくんの場合、これらの不幸は作品のレベルアップにつながった。  結果として、マサトくんは作家としての人気が上がって、収入も増えた。貧乏神に魅入られてお金持ちになった、数少ない例かもしれない。  私は嬉しかった。だって、自分の貧乏神としての性質が、小説家としての彼の才能を開花させることに繋がったんだもん!  私達には、お互いが必要なのだ。マサトくんは私といることで小説家として成功し、私は私と一緒にいても貧乏にならない彼氏に、やっと出会うことができた。
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