第一章 気付き

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「ん……」  外から聞こえる鳥の歌声に、私は目を覚ました。  私はベッドの上で息を吸いながら伸びをし、軽やかな足取りで窓に近付いた。 「良い天気……」  カーテンを開けると秋の柔らかな日差しが部屋の中に降り注いだ。体中に日光を浴びてもう一度ゆっくりと体を伸ばす。  時計を見ると朝の7時前だった。 「ちょっと早く起きちゃったかな……まあいっか」  そう言うと洗面所で顔を洗いキッチンへと向かった。  フライパンを熱して油をひき、卵を割り入れる。白身がパチパチし始めたところで少量の水を入れてフタをする。並行してポップアップトースターで食パンを焼きつつ電気ケトルのスイッチを入れる。  卵の黄身が綺麗なピンク色に変わったらお皿へと移し、入れ替わりにベーコンを投入する。  いかにもオーソドックスな朝食だが、彼は……手刈 尊(てかり たける)はすごく喜んでくれた。私の部屋で初めて夜を共にし、その翌朝に作ったのもこれと同じメニューだった。  もっと手の込んだものを作ったほうが……とか色々考えたが、彼はこういう普通の朝食を作れる女性が好きだそうだ。  彼はとても優しく、そしてイケメンである。しかも仕事もバリバリこなすパーフェクトヒューマンだ。当然私と付き合う前にも彼女はいたらしい。  ただ、あんまり長続きしなくてすぐ別れてばかりだったそうだ。  なので最初はかなり警戒していた。私にとっては初めての彼氏だったので、男性というものがよく分かっていなかったからだ。  しかし、そんな心配は取り越し苦労に終わった。どうやら彼が今まで付き合ってきた女性達は、高飛車な上に浮気したり金遣いが荒かったりといわゆる「地雷女」ばかりだったらしい。私が一人で牛丼屋にいたことが衝撃だったと語っていた。  そのおかげという訳ではないが、彼は私をとても大事にしてくれた。  イケメンなのに女で苦労するという人生を歩んできた彼曰く、私は「天使」なのだそうだ。こんなことを堂々と言い切る尊に私はどんどん惹かれていった。
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