第一章 気付き

9/11
前へ
/18ページ
次へ
 今日は私の誕生日であり、二人が付き合って丸3年の記念日でもある。お互い20代後半になり、そろそろ結婚適齢期になってきた。同年代の友達でも結婚した子が何人かいる。  田舎(と言っても車で1時間くらいだが)の父と母もそこは気にしているようだった。両親にはまだ尊のことを言っていないが、彼なら何の問題もなく受け入れられるだろう。  と、色々考えているうちにフライパンが火を噴いていた。 「あきゃっ!」  私は奇声とともに急いでフライパンをコンロから持ち上げた。ベーコンとは思えないほど燃えている。 「水っ、水ーーっ!!」  と叫びながらファイヤーベーコンに水をぶっかけた。焦げ臭いにおいが部屋に充満している。 「げほっ、くさっ。はー、どうして私はこんなにドジなんだろう……」  爽やかな朝の空気がぶち壊しになってしまった。けど、彼はこんなドジなところも好きだと言ってくれる。 「あっ、パン!」  その時、トースターからも煙が出ていることに気付いた。 「ひいっ!」  叫びながらダッシュで駆け寄りダイヤルスイッチを止める。 「ああ……」  飛び出してきた物体はパンというより木炭に近い感じだった。これではとても食べられない。  結局今朝の朝食は目玉焼きとコーヒーだけになってしまった。 「尊と一緒の時にこれをやらなくてよかった……」  と、自分を納得させ、じっくり目玉焼きを味わった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加