第二章 回想

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 改めて考えると不健康極まりない生活である。これじゃ頭皮が悲鳴を上げるのも無理ない。  兄から薄毛のことを教わり、尚且つ自分がハゲ家系だと分かっていながら何の対策もしてこなかったのは完全に俺の油断だった。    まだハゲ始まったかどうか確定した訳ではないが……ぬぐい切れない不安を感じていた。    ――だが、俺にはそれ以上に不安なことがある。  未央奈は……未央奈はもし俺がハゲたらどう思うのだろう。    いつも笑顔で側にいてくれた彼女は、変わりゆく俺の姿を見てショックを受けるのではないだろうか。 そして、俺のもとを去ってしまうのではないか……?  いや、未央奈に限ってそんなことはない。はずだ……  今の俺にとって、彼女のいない生活など考えられない。それはこれからも変わることはない。  思い切って聞いてみるべきか?  いや、それは愚問というものだ。俺は彼女の全てを信じている。  今はハゲのことよりも俺たちの将来について話し合うことが大切だ。    俺は一度ハゲのことを頭の隅へと追いやり、エビチリを美味そうにほおばる未央奈の目を真っすぐに見つめた。  ***
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