第一章 気付き

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「ん……」  外を走る車の騒音に、俺は目を覚ました。  まだ半分ほど閉じた目をこすりながら、テーブルにあるはずのタバコを探した。ビールの空き缶やファーストフードのパックやらが群れをなしている。  この光景を見たら、またあいつは「もう」と言いつつも片付けてくれるんだろうな……俺はある女の顔を思い浮かべながら捜索を続けた。 「お、あった」  ようやく見つけたタバコをくわえると、愛用のオイルライターで火をつけた。  頭を掻きながらゆっくりと紫煙をくゆらせる。  昨夜は一体何時に寝たのか記憶にない。日付が変わる頃に帰宅し、帰りがけに買ってきたコンビニの唐揚げをつまみにビールを流し込んでいるうちに寝落ちしてしまったようだ。ここのところ仕事が忙しくて自炊する暇などない。  ふと掌を見ると、脂でテカっていた。風呂も入らず歯磨きもせず寝てしまったのだ、不衛生なこと極まりない。
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