第一章 気付き

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 カーテンを開けると太陽がかなり高い位置に達していた。 「やべえ、もうこんな時間じゃねーか」  時計を見るとすでに午前11時を過ぎていた。俺は急いで服を脱ぎ捨ててバスルームへと駆け込む。  カラスの行水よりも早く風呂を出ると、急いで髪を乾かし始めた。  今日は付き合って3年になる恋人、瀧 未央奈(たき みおな)の誕生日だ。いつもは大衆酒場やファミレスなどお手頃価格の店で飯を食っているが、今日は奮発してホテルで高級中華でも、と考えていた。  未央奈は才色兼備という言葉を地でいくイイ女である。俺にはもったいないくらいだ。おまけに性格も良いときている。  あいつと付き合うまで、美人という生物はあざとくてキツい人種だと思っていた。少なくとも俺が今まで付き合ってきた美人達はそうだった。    だが、未央奈は違った。  俺より1年後に入社してきた未央奈に惹かれ、出会ってから半年後に交際を始めた。  彼女は今まで付き合ってきたどの女よりも美しく、相当男慣れしているのではと最初はかなり警戒していた。  しかし、未央奈は今まで色恋沙汰に縁が無かったらしく、男性と付き合うのは俺が初めてだった。それゆえ女特有の腹黒さがほとんど感じられず、それでいて自分をしっかり持っていた。俺はどんどん彼女にハマっていった。  未央奈との交際は順調で、付き合い始めてから今日で丸3年になる。俺の人生において、ここまで長く付き合った女性はいなかった。  そして、俺は今年27歳、未央奈は26歳でお互いにアラサーだ。そろそろ結婚適齢期と言ってもおかしくない年齢である。もしかしたら未央奈もそろそろ結婚を意識しているのでは……俺は勝手にそう思っていた。
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