第一章 気付き

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 俺と未央奈は共に大手家電メーカー『ボールディ』の社員である。ただ「部」は違って俺は営業部で未央奈は経理部だ。  営業ってのは何かと経理に出入りすることが多い。しかもうちの会社は営業がほぼ男で経理は管理職含め全員女だ。となると必然的に恋愛へと発展することが多くなる。  新卒で入って来た未央奈は営業社員の間ですぐ噂になった。 「新入社員の瀧さんおっとりしててマジで可愛いな!」 「ぜってー俺が落としてやる!」  飢えた狼達が可愛い子羊をロックオンしていた。  が、当の未央奈は誰がアプローチしても全く手応えが無く、難攻不落の要塞と化していた。そのことで「お高くとまってんじゃないわよ!」と一部の女性達に妬まれた時期もあったが、彼女が純粋な天然であると分かったのか、すぐにその誤解は解けたようだ。  その頃、俺は当時付き合っていた女の浮気が原因で別れたばかりのため、新しい恋をする気にはなれなかった。  だが、ある日の昼食時に会社近くの牛丼屋でたまたま隣同士で座ったのをきっかけに話をするようになった。正直、未央奈のような美人が一人で牛丼屋に来ること自体が俺には衝撃的だった。  彼女は噂通りの天然だった。天然だが仕事はきっちりやるタイプで、俺はどんどん未央奈に惹かれていった。  しかし、俺は失恋したばかりということもあり、積極的に未央奈にアプローチすることは無かった。が、どうやらそれが効果的だったらしく、彼女も俺に対して興味を持ってくれた。  恋をした女の言動は分かりやすい。未央奈の場合、天然かつ初めての恋愛だけにそれが顕著だった。  そして出会ってから半年、俺は未央奈に告白し二人は無事恋人同士となった。  俺達は順調に愛を育み今日に至ったのだが……やっぱり前髪が気になってしまう。  そう言えば……  ***
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