幼なじみこんふりくと

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3話 心配 翌日の月曜日、今日は水泳部の朝練はなかったので、教室、一番後ろの窓際にある飛鳥の席に集まり、のんびり話していた。 「そういえば昨日のすげぇ背の高いやつ、どんな知り合いだったんだ?」 教室に来る前に校内の自販機で買ったであろう、いちごミルクのブリックパックにストローを挿しながらそう聞いてきた雷斗に、昨日は颯馬の不機嫌のせいで誰にも聞いてもらえなかった話をよくぞ聞いてくれましたとばかりに飛鳥は話始める。 「あの子さ……実は僕の初恋の人なんだよね」 そう言った瞬間に雷斗はいちごミルクを気管に入れてしまったようでゴホゴホと噎せた。 「小さい頃から背はわりと高かったけどさ……小さい頃って女の子の方が背が高いとかあるからきにしてなかったし、すっごく可愛い顔してたから女の子だと思い込んでたんだよ……」 「わりとそれがショックだったからさー。すばくんとそまくんに話聞いてもらおうと思ったら、そまくんすっごく機嫌悪くてそんな話すら出来ないかららいくんと話せるのほんと癒し」 飛鳥が机に突っ伏していると頭に手の感触がし、ポンポンと労わるように頭をなでていった。 「大変だったな。それに、颯馬の警戒心相変わらずだな。俺対しても去年1年間ずっと威嚇する犬みたいな感じで面白かったよな!」 雷斗は豪快に笑ってそう言うが、去年の雷斗に対する颯馬の態度は酷いもので、昨日の京一への態度はまさに1年前を彷彿とさせるものだった。 再会したばかりの颯馬は今ほど排他的な態度を取ることはなかったのだが、中学でも昴が誰かに絡まることが度々あったため、飛鳥も気づく度に相手に注意しに行った。 その際、暴力に訴えられることもあったわけで、飛鳥も中学にもなると部活動にも熱心に励み、自分一人の問題ではなくなると理解して颯馬の時のようにやり返すことは極力しないようにはしていたが、たまに身を守る為にどうしようもなく応戦するしかない時があり、そうして傷を作って帰ってくる度に颯馬の肝を冷やした。 そんなことがあったため、颯馬は過保護になり、昴や飛鳥の人間関係に厳しくなってしまったため、自業自得の側面もあり強く怒るに怒れなくなってしまった。 「いや、でもさ……そまくんいまだに僕がすぐにどこでも喧嘩するようなやつだと思ってるの酷くない?」 昨夜の颯馬の態度を思い出し、不満を漏らす飛鳥を雷斗はまあまあと宥める。 そんなことを言っていると廊下から颯馬の姿が見え、飛鳥と雷斗の方へ近づいてくる。 「飛鳥……今日、昴を見ていないか?」 颯馬は昴と同じクラスで、いつもであれば1限目の開始時刻30分前には昴は教室の前方、比較的中央に近い列にある自分の席につき、授業の準備をしている。昴はそこそこ勉強が出来るので、颯馬が剣道部の朝練を終えて教室に入ると、クラスメイトに宿題を写させてやる姿を度々見かけるのだが、颯馬が教室に入ってくると蜘蛛の子を散らすように去っていく。 クラスメイトが逃げていくと、昴も颯馬が来たことがわかるようで、教室を見回し颯馬を見かけるとぱっと表情が明るくなり、はにかみながらも一生懸命朝の挨拶をしようとするそんな昴の姿を颯馬は愛らしく思っていた。 しかし、今日は朝練が終わって教室に入ってもいつもの昴の丸い背中が見当たらないというのだ。 「……寝坊とかじゃないの?電話は掛けてみた?」 飛鳥がまず颯馬に問うたのはそれだった。 「電話は掛けたが、電源を切っているのか、充電が切れているのか、電波が悪いのかはわからんが、繋がらん。家にも掛けたが昴のお母様からはいつも通り家を出たと言われた」 となると、今までの経験から言って昴は誰かに絡まれて学校に来るまでの間、どこかで立ち往生しているはずだ。 朝のHRまであと10分……。 「そまくん、探しに行くよ」 飛鳥がそう言うと颯馬も「ああ」と答え廊下を駆け出した。 靴を履き替え校門へ向かうと、校門側からふらふらと歩いてくる昴の姿が見えた。 2人は互いにホッと顔を見合わせて昴に近づく。 「すばくん、遅刻しちゃうよ。今日はどうしたの?」 「あ…えっと」 昴は飛鳥に声をかけられて初めて2人の存在に気づいたようで、視線を右往左往させた。 「お腹が痛くて……」 お腹を押えながら俯いてしまった昴を2人は観察した。 いつもきっちり制服を着る昴にしては制服が乱れているが登校中に腹痛を起こして駅のトイレに駆け込んだのであれば仕方ないのかもしれない。殴られたりしたような怪我もパッと見では見当たらない。少し顔色も悪いように見えるが、腹痛からくるものならここいるより保健室で休むかトイレに行かせてあげる方がいいと判断した。 「飛鳥、ありがとう。昴は俺が保健室まで連れていくから飛鳥は教室に戻ってくれ」 颯馬がそう申し出た。飛鳥も他クラスの自分よりも同じクラスの颯馬の方が適任だろうと思いそのまま昴を任せて教室に戻った。
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