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8話 手だけ貸して 視点:昴
飛鳥の友人には困っている人を放っておけないお人好しが多い。おそらく飛鳥自身が天真爛漫でありながら、清廉潔白で誰にでも優しいけれど大切にする人はきちんと選び取れるような人物だからだろうと昴は思っていた。
自分に無いものを全部持っていて、飛鳥の傍にいれば自分に寄ってくる嫌なものから守ってくれる。昴にとって神様のような存在だと思っていた。
それが段々とそうじゃなくなっていったのは、中学生になり、颯馬と再会したからだ。颯馬は昔のことを謝罪してくれ、傍にいてもいいかと言われ胸が高鳴った。
自分がピンチの時にしか傍に現れない神様と、いつも傍にいて優しくしてくれる王子様。しかし、月日を経て自分の身体がどんどん成長し、神様が小さく見えるようになっていくにつれて昴は気づいてしまったのだ、王子様は神様に愛されたくて自分に優しくしてくれているだけなのだということに。
自分は籠に入れられた鳥かと思った。枷になっている籠は飛鳥で、颯馬のことが好きなのは初めて傍にいてくれた相手だから刷り込みのようなものなのではないか。それを確かめたくて男に抱かれてみようと思ったけれど、最中に浮かぶのは颯馬の姿で……自分は籠の中の優しい世界から抜け出すことは出来ないのだと実感させられただけだった。
でも、もうそれもおしまいなのだ。神様は自分のことを鳥じゃなく異質な化け物を見る目をしていた。
飛鳥の友人は困っている人を放っておけない。だから、飛鳥のことが好きだと言ったこの人もきっとそうに違いないと、この短時間接しただけでもわかった。
「……1人で寝たくない」
そう言えばきっと彼は拒否出来ないだろうと思ったのだ。
「それは……怖いことがあって眠れないから?」
「そうかもしれない……」
京一はいいよと返事をした。その前に少し連絡を入れておきたいから先に休んでいてと言われ、昴は案内されたベッドに横になった。
京一は背が高い。おそらく、彼の父親も身体が大きいためベッドもこんなに広いのではないだろうかと推測しながら天井を見上げた。数分すると半袖半ズボンのルームウェアに着替え、枕を抱えてやってきた。
「連絡は……終わった?」
「まあ、といっても時間が時間だしメッセージ送っただけだけどね。大丈夫……話してくれたことを飛鳥に告げ口したりはしてないから安心して」
2人で横に並んでベッドに横になる。京一は疲れていたのか、しばらくすると規則的な呼吸が聞こえてきた。昴がちらりと横を見ると仰向けになり穏やかな表情で眠る京一の顔が見える。色素の薄い、整った美しい顔を正面から見るために少し身を起こし覗き込むが起きる気配はない。昴はそのまま顔を落とし、自らの唇で京一の唇に触れてみる。柔らかく温かい感触に心地よさを感じ、京一の反応を確認しながら何度も繰り返す。柔らかく触れるだけのキスから軽く京一の唇を吸ってみる。それでも起きないことがわかると昴は京一の下衣に手を伸ばす。生地の上から股間に触れると身長の高さに比例してなのか今までの男よりも立派なものなのではないかと感じた。ゆるゆると揉みしだくと、京一の呼吸が少し乱れる。
それでも目を覚まさないことを確認するとベッドの上を這い、京一の物の近くに顔を寄せ濃くなっていく雄の香りを肺に吸い込む。その香りを嗅ぐと昴の身体も熱を持ち始めて、更にその香りを堪能するために下着ごと下衣を腿まで引き下げ京一の性器を外気に触れさせた。覆うものがなくなったそれはやはり立派なものだった。太さも然る事ながら長さが今までの男の比ではなかった。
布越しの刺激で既に半勃ちになっているそれに口づけてみる。口の間からちろりと舌を出し、根元から先端に向け順に舐めてゆく。唾液で濡らした陰茎を今度は指で輪を作りしごくとみるみる硬度を増し先走りが溢れ出す。汁が伝って衣服やシーツを汚さないように亀頭を咥え、じゅうっと尿道口を吸い上げる。
「っん…………」
京一が気持ちよさそうに小さく声を漏らすのを聞き、昴はさらに深く自分の喉まで京一のものを咥え自分の頭を上下するように動かす。
唾液と先走りが混ざり咥内からじゅぶじゅぶと音が激しくなる。すると京一の足がもぞりと動いたかと思うと驚いたような声が上がる。
「……え?なっ……たか……なし、くん……なにを」
明らかに動揺している京一に昴は視線だけ向け、微笑むと再び視線を下す。
京一のものを口いっぱいに咥える顔は綺麗なものではなかったが、それはあまりに卑猥で扇情的だった。
その光景を見ているだけで中心に熱が集まっていくように感じる。
「まっ……て、もう」
止めようと昴の頭を退かせようとしたが昴は口を離そうとはしなかった。
「ん……らひて」
咥えたままでそう言われた瞬間に、京一は昴の口内に精を放っていた。
恥ずかしさのあまり京一は自分の腕で顔を覆い呼吸を整えていたが、ちらりと昴の様子を窺うと先ほど京一が放った精を飲み下しているのが見え京一はぎょっとした。
勢いよく起き上がると衣服も乱したままサイドテーブルにあったボックスティッシュから数枚ティッシュを取り出すと有無を言わさず昴の口元を拭く。
「高梨くん……君は何をして……それよりそんなもの飲んじゃだめだよ」
「ねえ……京一さん……俺のこと抱いてよ」
昴は向かい合って座る京一の首に腕を回ししなだれる。
「それは……だめだよ」
「……俺、初めては好きな人とって……決めてるから」
やはり飛鳥の友人だなと思った。自分のことも相手のことも大切に、間違ったことはしてはいけないと教えられたとおりに守ろうとする真っすぐで綺麗存在だ。
「……わかった。ごめん…………」
羨ましい…………
自分もああなりたかった。
羨ましい……憧れる……悔しい
憎い。欲しい……
「ねえ、抱かなくていい、から。手だけ……貸して」
昴は自分の中に渦巻く様々な感情を抑え込むようにして京一に微笑んだのだった。
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