侵略の奇跡

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 クチャクチャ音に混じったカタカタ音。  不協和音に近い音響が、ぐるぐると回りながら僕の部屋を支配していた。 「早くしないと、間に合わないんじゃないのかなぁ」  そんな二つの音の中に、間延びした声が背後からプラスされる。 「分かってるって、そんなこと」  僕は半ば血走った目で、パソコンの画面を睨みながら言った。 「残り一ヶ月だよ。本当に出来るのかなぁ」 「うるさいな。暢気に梅昆布を食ってる奴に言われたくない」  僕はワードに文章を打ち込みながら、苛立った口調で返した。  挑発してはいけないと分かっていても、彼の間延びした口調と暢気な態度。口に咥えた梅昆布からして、僕は彼を恐れる気にはなれずにいる。  それがたとえ、一ヶ月後に地球を侵略する予定の宇宙人相手だったとしてもだ。  この宇宙人と出会ったのは、遡ること三ヶ月程前になる。  まだ、自宅近くの公園で桜の花が咲き誇り、暖かな風が長閑な日常を演出していた時期のことだった。  僕は自宅のアパートからほど近い、この公園によく足を運んでいた。
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