10人が本棚に入れています
本棚に追加
そぼ降る雨に気を取られ、何時から道を誤っていたのだろう。
常日頃から鈍感だと言われる僕には些細な自然の変化などまるで気が付かなくて、正しい道程を間違いなく歩んでいるのだと思う勘違いが分かるまでに時が経ち過ぎていた。
歩んで来た道は人の道から獣の道へ変わり、取り合えず進もうと無理したあげくに、草丈が伸びて細い足取りさえ見失った頃にはすっかり迷子だった。
(ここは、どこなのだろう)
山腹なのか、頂きに近いのか、裾野なのか。
生い茂る草木に視界は遮られ、間断なく降り続ける雨に陽の光も遮られて時間も分からない。
鬱蒼とした森林。
立ち昇る靄が霧へと変われば、行先の判断は全く付かなくなるだろう。
同じ場所をグルグルと歩き続け、体力を無駄に削るだけになるかも知れない。
(雨が止むまで)
そう思い、目に付いたかなりの歳を経ているだろう古木の根元に座り込んだ。
座るのに丁度良い岩があったのもあるし、落胆からもう足が動かなかったのもある。
うっかり落としてしまったスマホの画面は真っ暗で、振ったり叩いたりもしてみたが当然何の反応も見られない。
最初のコメントを投稿しよう!