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そして、2人の娘も小学校高学年になり、いくらか落ち着いて来た頃、男の子が欲しいなと夫婦は思った。そして、待望の男の子を授かる。それが本田健太くんだった。
しかし彼は祖母と同じように病弱だった。性格も優しく穏やかで、自然と無理をしない落ち着いた性格になっていた。物をねだるという事もほとんどなかったが、漫画やアニメを見る時などは目を輝かせていたと言う。
そんな孫を不憫に思ったか、それとも自分に近いものを感じたのか、祖母は彼の小学校の入学に際し、常に本に挟んで傍らに置いていたしおりをプレゼントした。その時、既に寝たきり状態で入院していたため、本を読む力もなくなった彼女は、孫に向かってこう言った。
「このしおりはね。おじいちゃんが見つけてくれた幸運のクローバーで作った大切なしおりなんだよ。私は常にこのしおりと共にあった。私は今まで十分すぎるくらい幸せをもらったよ。だから次はおまえが幸せになっておくれ。
本は幸せを運んでくる。私はもう本を開く事も出来ないから、私が持っている本も読んでくれて構わない。そして、楽しませてもらったお礼に本に感謝する事を忘れないように。そしたらまたいい幸運がやってくるんだ。巡り巡るのさ、幸運は。しおりを大切に使っておくれ」
この1年後に彼女は生涯を全うする事になる。記憶の中でずっと私を大切にしてくれた彼女が亡くなってしまい、かなり落ち込んだものだ。ともかくそんなわけで、私は今のご主人である健太くんのしおりとなったのだった。
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