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玄関の鍵が開く音がして、扉がガラガラと開く音がする。どうやら健太くんが帰ってきたようだ。この開ける音は彼に間違いなかった。私は待ちに待った気がして、もしも体があったなら飛びついていきそうになる。
ガチャリと音がして、健太くんの自室に誰かが入ってくる。私は本に挟まれているから誰かは見えないが、この音は間違いなく健太くんだ。
案の定、私を閉じている本が開いて、私は健太くんの温かい手で、優しくそっと机に置かれる。学生服姿の健太くんが見える。そして優しくて真面目そうなその顔で、じっと本の世界に集中していく。
安らかな時間が流れる。この時間がたまらなく愛おしい。ただ見ているだけなのに、どうしてこんなにも心が落ち着くのか。いつまでもこの時間が続いてほしいと思う。満たされた思いで、私は健太くんの顔を眺めていた。
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