手記10 日常

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「先生、私のことを楓と呼んでくださいましたね。ずっと『君』か『御堂さん』だったから、嬉しかったです」 「咄嗟に口から出てしまった。聞かなかったことにしてくれないか。学内で噂になると困るんだ」 「……分かりました」  これからもずっと『楓』と呼んでくれると嬉しかったのですが、対外的には教授と助手。立場を考えた先生は、私を『楓』と呼んでくれませんでした。  先生を困らせるつもりのない私は、我慢することにしました。 「先生、アカダルマって何なんですか? どうしてこんなことが今まで知られずに伝わっていたんでしょう」  分からないことが多すぎて、すっかり混乱してしまいました。  先生は、「蛇骨智也が実家に戻っているかもしれないから、四方盆村に行ってみようと思う。もしかしたら新情報が出ているかもしれない。それを確認したい」と言いました。  私は先生に頼みました。 「先生、私を連れていってください」 「行きたくないと、言っていなかったっけ?」 「気が変わりました。私、尚美の霊を見て、彼女の無念を感じたんです。彼女のためにも、呪いの正体と向き合うべきなのかもしれません。もっとアカダルマについて勉強して、呪いから逃れる方法がないか探してみたいんです」  行くだけ無駄かもしれません。  先生が知っている以上のことは、何も分からないかもしれません。  四方盆村の人々だって、長年アカダルマについて調べてきたはずです。  それでも、アカダルマの正体を知ることは出来ていないのです。  だけど、呪い殺されたみんなが霊になっても苦しんでいる姿を見てしまった以上、何もしないでいられませんでした。 「分かった。一緒に行こう」  先生が承諾してくれました。  先生と一緒に旅行できる。それも私に決意させた一因です。  先生がそばにいてくれれば、アカダルマの呪いから守ってくれるような気がしたからです。  私たちは、四方盆村に向かいました。
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