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開かずの間に戻ると一枚一枚剥がそうとするが、年月が経って張り付いてしまった護符は、いくら綺麗に剥がそうとしても無理があり、最後には多少破けても仕方ないと諦めた。
「こんなにたくさん貼るって、どういうこと?」
エミリーには理解し難い。
すべての護符を外すと、鍵穴が出てきた。
見つけた鍵を鍵穴に差し込むと、ピッタリ入る。
「さーて、開けるわよ」
左に回すと、カチャリと音がして動いた。
「開いた。いよいよ、中が見られる」
何があるのかと、ドキドキしながら戸板をガタガタとスライドさせる。
中はムッとする臭気。
「ウワ……」
何とも言えない気持ちの悪い空気がエミリーを襲う。
室内が暗いので、懐中電灯をかざす。光に照らされた壁床を見たエミリーは、思わず悲鳴を上げた。
「イヤアア! 何! これ!」
部屋中がおびただしい血で汚れている。ここから逃げたくなったが我慢した。
「一体、ここで何があったというの?」
どう見ても誰かがここで血を流している。それも、生きたまま切り刻まれて全身から血が噴き出したかのように飛び散り、天井まで達している。
血痕は黒ずんでいて、とても古い。かなり昔にあった事なのだろう。
閉め切った部屋。こもった空気。室温が低いのか、寒気がして震えが止まらない。
「こんなに恐ろしい過去をひた隠しにしてきたというのなら、あの優しさは全ては幻想だったというの?」
とても信じられないが、この悪趣味な部屋は作りものではない。あの優しかった祖父母と母のイメージが崩れていく。
「どういうこと?」
ショックで頭が回らない。
部屋の真ん中に小さな文机が置かれている。ここに残された唯一の家具である。
文机も血まみれだが、天板には汚れていない箇所がある。
血しぶきが飛び散った時に何かが置かれていた跡だ。
「何かがここで起きた後に動かしたってことか……」
長方形に残った形と大きさからみて、本かノートと思える。
「どこにあるんだろ?」
文机の引き出しを開けると、血で汚れた一冊の日記帳が出てきた。
「これか……」
それまでも護符で封印されていた。
恐る恐る手に取る。ずしりと重く感じる。
「開けて読むべきか、やめておくべきか……。いいえ、真実を知るなら読むしかないでしょ!」
エミリーは、開けてみることにした。
丁寧に護符を剥がすと、そこだけ綺麗な表紙が出てきた。
「これ、先に封印してから血にまみれたということだ。持ち主は、これから起きることを予見していたということ?」
ますます内容に興味が出る。
「ふうー」
綺麗に剥がした護符を文机に置く。
呼吸を整えると、思い切って表紙をめくった。
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