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目の前は真っ暗で、アイマスクを付けられている感じでした。何も分からず、恐怖しました。
周囲は凍てつく寒さでした。そこに体を縛られて転がされていたのです。
「動けない……」
立ち上がることもできず、芋虫のようにうごめくだけ。いくら足掻いても、ほとんど移動できませんでした。
「誰かいますか? 先生?」
先生もどこかにいるのだろうかと考えて、先生を呼びました。
「先生! 先生!」
返事はありませんでした。
部屋の中には、私しかいなかったのでした。
それとも、別の部屋で先生も縛られているのかと心配しました。
静かにすると、本当に何の音も聴こえません。
誰かが生活していれば、水を流す音や足音、話し声が聞こえてきそうなものですが、何も聴こえないし、振動もありません。
この建物自体が使われていないのだと思いました。
「誰か! 助けて!」
私をここに運んだ人がいるはずです。
殺すつもりがあればとっくに殺している。
何か目的があって、私をここに閉じ込めたはずです。
だから、必ず誰かがやって来ると信じていました。
外が見えないので時間の経過が分かりませんでしたが、室温がかなり低いので、夜になっているかもしれないと考えました。
このままでは凍え死んでしまうと不安になった私は、体温を上げようと、可能な範囲で体を動かしましたが、すぐに疲れてやめてしまいました。
体を休めながら、誰がこんなことをしたのか考えました。
真っ先に頭に浮かんだのは、蛇骨智也でした。
というよりも、彼以外に考えられませんでした。
蛇骨智也の霊を私はまだ見ていませんでした。
それはつまり、生きてどこかに隠れているということです。
男乕均の肝臓を食べたにも関わらず、まだアカダルマの呪いに苦しめられていたとしたら、私の肝臓を狙っての凶行です。
私は殺されると思いました。
「先生!」
なんとなく先生が助けに来てくれるような気がしました。
いえ、切望しました。
最後の記憶は研究室です。
先生が煙草を吸いに出て行ってからの記憶がなかった。
つまり、先生は私が突然姿を消したことを不審に思うはずです。
不審に思えば必ず探してくれると信じていました。
「今はジッとして体力温存しておこう」
長期戦を覚悟した私は、暴れるのを止めて横になりました。
横になると眠気がやってきて、いつの間にか寝ていました。
時々目が覚めてうつらうつらすると、また寝てしまいました。
そんなことを数回繰り返したことで、完全に時間の感覚が無くなりました。
喉も渇いて、お腹も空いて、このまま死ぬのかと恐ろしくなりました。希望を持ったり諦めたりの繰り返しでした。
目を覚ますたびに衰弱していくのが自分でも分かりました。
犯人が誰だろうかと考える気力もなくなり、喉の渇きが極限になって水のことばかり考えるようになっていました。
――水、水、水……。
渇望感で死にそうでした。
不思議なことに、研究室では全員集合した霊たちが死にかけている私の前に一つも現れなかったのでした。
アイマスクをしているから見えませんが、気配もありませんでした。
彼らでも、私が死ぬ運命にあると分かっていたのでしょうか。
自ら手を下す必要もないと、見捨てたのでしょうか。
変な表現ですが、この時の私は見放された気がしたのです。
きっと思考力が無くなっていたんだと思います。
「尚美……、あの時は助けてくれてありがとう」
気持ちを口にしてから、死んだら霊となって再会できて、いくらでも直接伝えられるじゃないと思いました。
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