手記1 この呪いから逃れることはとても困難である

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手記1 この呪いから逃れることはとても困難である

 最初に大切な注意を書きます。必ず読んで実行してください。  この手記を読んだら、簡単に(さわ)れないよう、護符で封印してください。  決して家の外に出さないでください。  これ以上、不幸な犠牲者を出さないためにとても大切な事ですので、必ず守ってください。  私の亡骸に素手で触らないでください。できればそのまま放置してください。  私は呪われていますから、死んでいたとしても、とても危険です。  私はそれを嘆いたり恨んだりしません。それどころか喜ぶでしょう。  私が辛いのは、お父さん、お母さん、紅葉お姉ちゃんにこの呪いが及ぶことです。  実家に帰ることもやめようかとずいぶん悩みましたが、外で死んでは不幸が広がるだけなので、最後のわがままで帰らせてもらいました。迷惑掛けて本当にごめんなさい。  この部屋も必ず封印してください。未来永劫開けないでください。  どうしてこうなったか詳しく書いていきます。  私は、「アカダルマ」に呪われています。  アカダルマとは、とある地方の山奥にある四方盆(よもぼん)村の伝承に出てくる、人を呪い殺す化け物のことです。  荒唐無稽な話に思えるでしょうが、どうか疑わないでください。この話は嘘ではありません。  私は何度も見たのです。アカダルマに呪い殺される人を。  この手記を残す目的は、「アカダルマ」の恐ろしさを知って欲しいからです。  恐ろしさを知れば、私がなぜこのようなことをしたのか、ここを封印するようにお願いしたのか、全て理解できるでしょう。  アカダルマに呪われると誰も逃げられません。貴賤、貧富、善人悪人など全て関係ありません。どれだけ信心深かろうとも意味ありません。アカダルマの前では、恐ろしいほどに誰もが平等なのです。  逃れるための手段はあります。具体的な方法は後ほど書きます。  実行がとても難しく、私にはとてもできませんでした。  だから私は死を選びました。  まずは、なぜ私が行った事のない四方盆(よもぼん)村のアカダルマに呪われることとなったのか、そして、それによって何が起きたのかを書きます。 ――とはいえ、どこからどう書き始めればいいのか、頭の中でグルグル回ってなかなか上手にまとまりません。  今でも気持ちは落ち着きません。悲しみから立ち直れないのです。  私は全てを失いました。呪い殺される前に死ぬのも喪失感のせいです。  順を追って始めから書いていきますが、不慣れなために長文になったり、まわりくどくになったり、脱線したり、下手な文章になるかもしれませんが、私が存在していた証でもありますので、どうか最後まで読んでください。
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