Reportage1

3/10
前へ
/52ページ
次へ
 いまだにこういう少女っぽい反応をする。  もう100年以上も生きているというのに。  数年前のあの日、病の床に伏して死にかけていたと思っていたのに、ただ風邪をこじらせただけだという。 「アザミの奴、どこ行っちまったんだろうなぁ……」  何となくそんな事を呟いていた。 「国中を手配している。いつかは見つかるだろう」 「でもよ、他の国に行っちまってたらどうすんだ?」 「その時はその時だ」 「だから俺の手配書を使えって。一発で見つかるぜ?」  右手をひょいと軽く上げると後ろに控える護衛が手の平に1枚の紙を乗せる。  バーンと女王に見せつける。 「また描いたのか。絵心以前の問題だな」 「何でだよ。そっくりだろ」  “ひょっとこ”の面を参考に描いたのだ。  似てないわけがない。  女王は軽くため息を吐く。それから横の壁の時計を見上げる。 「それにしてもヤクは遅いな……」 「ヤクとブドウもな」  紙を護衛に渡し、テーブルに右手を置く。再び指で叩き、その音が次第に速くなっていった。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加