Reportage1

6/10
前へ
/52ページ
次へ
 ヴィオンの声がそろっていない事にカルダミネが気づく。  ふと見ると、ヴィオンは不満そうな顔をしていた。 「どうしたのだ、ヴィオン?」 「まだなんだよ」 「何がだ?」  不思議そうな顔でそう問い返すカルダミネ。ヤクは不安げにヴィオンを見つめる。  ヴィオンは叩いていた指を握りしめ、ドンとテーブルを叩こうとしたがやめといて、軽く握りしめた手を置く。  「ブドウだよ! ブドウ! まだなんだよ!」  テーブルに並べられた料理の左端には、ブドウのたっぷり載った皿を置くスペースが設けられている。  しかし、そこにヴィオンが毎朝かかさず食べるブドウが無い。  ヴィオンは苛立っていた。が、そこへ。  再び扉の開く音がした。やっと来たか、とヴィオンは軽く息を吐く。 「お待たせしました。毎朝のフルーツ、ブドウでございます」 「おせーぞ! ミサキ!」 「も、申し訳ございませんっ! このブドウ多すぎて重くって……」 「はぁ? 今さら何言ってんだ? 今に始まった事じゃねぇだろ!」  申し訳ございません、と今にも消え入りそうな声で“囲い”は言い、左端のスペースに大量のブドウが載せられた皿を置く。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加