ヒトコト日記~18歳の環菜より~

2/6
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
 ある日、このコンビに清香と悠希を加えた4人で、飲みに行った。  昔話に花を咲かせ、お互いの近況報告で盛り上がり、たらふく飲んで食べて、解散。  ここまではよかった。  翌日、環菜と璃子、この2人だけに異変が起きる。  体が、若返っていたのだ。  白髪はほとんどなし、目のまわりの小じわもすっきりしている。  同時に、会社員ではなく高校生にも戻っていた。  しかし、世間の時間軸はそのまま。  10年前にタイムスリップしたわけはない。  その後、時間を操る神と名乗る、怪しさ満点の男が2人の前に現れた。  彼が話すには、こういうことだそう。  人は、時間を戻して人生をやり直すチャンスを与えたら、それを受けるかどうか。  これを検証するための実験をしているのだと言う。  18歳に戻り、4月から3月までの1年間、学校生活を送ってもらう。  そして期間が終了した時に、どちらの判断を下すのか。  環菜と璃子は、その実験体に選ばれてしまったのだ。  2人とも、そこそこ楽しく今の時間を過ごしている。  後悔していることや、あの頃に戻りたいと思ったことは、ない。  神(自称)に言わせれば、その方が実験としてはいいらしい。 「どうするの」 「仕方ないよ」  裏を知った時には、すでに遅い。  もう、体も環境も高校3年生にされてしまっているのだ。  元に戻してくれと訴えても、神の方にその気がないのだから、どうしようもない。  そういうわけで環菜と璃子、体は18歳、心は28歳という、あり得ないような生活を送っているのである。 「自分の体と、自分の周りの環境だけ、時間が巻き戻る」  やれやれ、と環菜は首を振った。 「こんなこと、あるのかね」 「まあ、普通はないよね」  ため息をつく璃子の表情は、28歳の大人そのもの。 「全く……現代ファンタジーじゃないんだから、勘弁してよ」  トホホ、と顔をかく主人公であった。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!