13人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
さて、場面を教室に戻そう。
現在は、5時間目の授業が終わったところである。
この後、クラスの担任教師が来て、HRを行えば本日は解散。
クラスメイトはあちこちに散らばり、ワイワイしながら自由に教師を待っている。
環菜と仲良し3人も、誰が号令をかけるわけでもなく、何となく集まって雑談をするのであった。
この4人、さして共通点もないのに本当に仲がいい。
前述した通り、清香はバレー部、悠希はジャズバンド部。
環菜は悠希と同じジャスバンド部、璃子は女子テニス部。
4人のうち、2人が同じバンドのメンバーではあるが、それ以外はバラバラである。
仲良くなったきっかけは、と尋ねてみても、4人同様に『いつの間にか仲良くなっていた』としか答えない。
しかし、友人なんて案外そんなものかもしれない。
仲良くなるのに、明確なきっかけや理由はなくたっていいのだ。
「……お腹空いた」
ふいに、清香がつぶやいた。
他の3人の視線が、サッと彼女に向かう。
「まさか?」
「今から?」
「食べようと言うのではあるまいな?」
「もちろん」
と清香はうなずいた。
「食べるよ」
3人がいっせいにずっこけた……。
「だって、もう和田ちゃん来ちゃうよ!」
よほど周囲の方があせっている。
和田ちゃん、と呼ばれたこの人が、3年4組の担任の先生である。
まだ若いが、よく相手の話を聞き、よく勉強を教えてくれるため、生徒からの信頼は厚い。
生徒に好かれている教師ほど、裏では愛称で呼ばれるのも、中高生くらいの生徒たちの中では、よく聞かれる話だ。
最初のコメントを投稿しよう!