七夕の日

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七夕の日

「7月と言えば、」  生島環菜は、ピッと人差し指を立てて、周りに問うた。  問われた友人たちが、瞬きをする。  時刻はお昼の12時。つまりは、昼食の時間である。  この高校には、校舎が3棟建っていて、それぞれの1階と3階には渡り廊下が設けられている。  そのうち、屋根のない3階の廊下には、生徒たちが時間をつぶしたり、昼食を取れるようにと、ベンチが据えてあった。  環菜と愉快な仲間たちこと、璃子、清香、悠希の4人組は、いつもここで昼食を取っていた。  よって、先ほど環菜が問いかけた相手とは、いつもの3人ということになる。 「7月と言えば……?」  悠希が首を傾げながら――冷凍食品のからあげを口に放り込んだ。 「質問がざっくりすぎるんだよ」 と璃子が言った。弁当箱の中に残った米をかき集めている。  昼食の途中だ。まずは、目の前のご飯に取り組むべきであろう。  清香にいたっては、おにぎりを運ぶ手を止めない。 「ふごごご」  一応(?)、発言したが、もちろん伝わるわけがなかった。 「いや、あのさ」 と環菜は言った。 「食事中に言いだした私も悪かったよ、けど……あまりに冷たすぎやしません?」  そう言う環菜だって、セリフの合間にウインナーを食べているのだから、相手を責められたものではない。 「で、何が言いたいの?」 と璃子が言った。 「環菜の方が、何か言いたいことあるんじゃないの」  さすが、10年来の親友は何でもお見通しである。 「よくぞ聞いてくれました」  環菜は嬉しいのか、ふふんと鼻をならした。 「七夕」 「七夕……?」  他の3人の声がそろった。 「え、七夕知らないの?」 「いや、知ってるよ」  いくら何でも、そんなはずはあるまい。 「笹と短冊、作ってみない?」 「ほほう」  3人の表情がゆるんだ。
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