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「大丈夫だって、」
一方の清香は平然とした表情で、自分のリュックの中を探っている。
「1分もあれば食べちゃうよ」
「1分って、何食べるのさ」
と璃子が尋ねた。
「カロリーメイトくらいしか思いつかないけど」
「そうねえ……」
清香はリュックから手を抜いた。
「あんぱんにしよう」
「あんぱん、1分で食べられる!?」
悠希が驚いて声を上げた。
「いや、この人なら食べるかも」
璃子がじいっと清香を見つめる。
璃子の予見、大当たり。
あんぱんの袋を開けた清香、あむっとかぶりついた一口の大きいこと。
1/4が消えた。
噛んで飲み下すのも早い。
口は大きく、食道は広く、胃は底なしなのだろう。
清香のあんぱんは、本当に1分足らずで彼女の胃の中に持っていかれてしまったのだった。
「足りないなあ」
そう言うと、清香は再びリュックに手を突っこんだ……。
「えっと……これはどうしたら?」
悠希が困惑した表情で、璃子に助けを求める。
「いつものことだ、もう放っておこう」
中身は28歳の璃子である。
今の彼女にとっては、清香たちとの付き合いはもう10年以上。
大食いの扱いにも、すっかり慣れた。
「ところで、」
それよりも、璃子には気になることがあるようだ。
「あんたは、さっきからずっと黙って何をしているの?」
そう言って、環菜に目を向けた。
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