聖女の遺言

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【この遺言書が読まれているということは、わたくしはもう、この世にいないのですね。    レオ。わたくしがどのような最後を迎えたのかは、この際脇において、あなたに伝えたいことがあります。  わたくしはあなたをお慕いしておりました。ですが、あなたの心無い仕打ちに形容しがたい怒りを覚えています。  恨み(うら)、憎しみ、嫌悪……ですが、もう、わたくしの声は誰にも、あなたにも届きません。  そうなってしまったのは、全部、わたくしのいたらなさに帰結してしまうのでしょうね。  ですが、伝えなければいけないことがあります。  すべてはあなたの為に。  わたくしが女神から授かった【寿命を削る回復魔法】について、周囲の人間は誤解しているのです。  たしかに、わたくしの回復魔法は寿命を削りますが、削る寿命はわたくし自身ではなく、対象者自身の寿命に依存するのです。  しかし、いくら説明してもみなさまは自分の寿命を削って、助かっている事実を受け入れてくれません。もちろん、あなたも。  わたくしの寿命が先に潰えたのは、ただ単に、わたくしの寿命があなたより短かったことと、魔王討伐の旅で自身にかけた回復魔法が寿命を削ったからです。  いずれ、分かることです。  ()が狂いそうです。あなたがいない。悲しい。苦しい。そして虚しい。  (てん)はどうして、こんな運命を授けたのでしょうか。さて、何度も私の回復魔法で生還し、戦い続けたレオ――あなたは、あとどれくらい生きられるのでしょう。  また、残された仲間たちはどれくらい生きられるのでしょう。もしかして、女神は普通の人間より寿命が長い者を、魔王を倒す先兵として選別したのでしょうか。  すべては、女神の知るところ――】  遺言書を読み終わったレオは、顔を青くした。  遺言書を渡した仲間は、この手紙をこっそり読んで、自分の寿命が残り僅かだという事実を悟ったのだろう。  レオにも思い当たることがあった。  ここ最近続いている不調は、慣れない王族教育のストレスではなく。もしかしたら――。
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