キス

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キス

 藍斗が…俺にキスしてる?  藍斗の右腕は俺を引き寄せて、左手は顎に添えられてる。 ふわって、いつもの柔軟剤の匂いとビールの香りに包まれた。 今になって映画のサウンドがやけにはっきり聞こえだしたし、さっきまで全く気にならなかったくせに、この部屋の蛍光灯は映画を観るには明る過ぎることなんかにも意識がいく。 痺れる様な衝撃は冷静とぼんやりの間を彷徨う俺の頭では処理できていたかわからない。 藍斗が少し離れたと思ったら、今度は角度を変えてまた口付ける。 その時の僅かに鳴るリップ音。 唇の柔らかさ。 触れ合う箇所から伝わる熱。 ばら撒かれた俺の意識はどんどんそこに集まってきて、夢中になっていく。 止める気は不思議となく、藍斗のしたいままに合わせていた。 しばらくして藍斗の口がゆっくり離れた。 もう目を閉じていた俺が目を開けると、まだすぐ近くに藍斗の顔がある。 「抵抗しないんだな?」 「……」 「嫌だったか?」 「…嫌じゃなかった」 「良かったか?」 「…わからない」 「そうか」 今度は包む様に俺を抱きしめた。 「じゃあもっと幸太郎に付き合ってもらわないとな」 藍斗は冗談ぽく笑いながら言った。 肌から伝わる感覚から震えてる?と思ったけど、藍斗の温もりにまぶたが重たくなっていった。
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