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祭
昨夜「よぉ!生きてるか相棒っ☆」と直登が電話してきた。
「相棒なのにずいぶん俺も放っとかれたもんだな」
「そう拗ねるなよ。俺だって大変なんだぜ。」
前に言っていた様に中々部活で忙しいみたいだ。他にもいろいろ話しして
「あ、明後日祭りあるぞ!?俺は柔道部の連中と行く予定なんだけど、お前も一緒に行くか?」
「あー祭りかぁ!でもお前以外よく知らないからやめとくかな。」
「気にすんなよ。それか蒼井でも誘ってみたらどうだ?お前ら勉強しかしてないんだろ?頭おかしくなるぞ、ははは!」
正確には勉強以外のこともしちゃってるけどその話しはやめておこう。
「なぁー藍斗ー。明後日お祭りなんだって」
あまり興味なさそうな「ああ、そうだな」が返ってきた。
「藍斗浴衣似合いそうだよなー」
「持ってない」
「こういう時は買わないのかよ?」
「なんの話だよ」
前に映画を見た2日後くらいに間接照明買ったくせに、素直じゃないなぁ。
実は俺は昔から母さんが着せてくれたからお祭りは大体浴衣なのだ。
去年は直登もノリでヘタクソなりに着てきてくれたから楽しかったし、それも醍醐味だと思うんだけど。
というわけでお祭り当日。
ギリギリまで期待した俺は浴衣と下駄で行った。
「なんか俺だけ張り切ってるみたいじゃん」
「事実だろ」
藍斗は宣言通り私服で来た。
「お祭り楽しみじゃないのかよ?」
「俺はお前といたいだけだから」
「そういうこと本人を前に言うなよ、恥ずかしくなるじゃん」
「お前に言わないであと誰に言うんだよ」
確かに。いや、お前に恥じらいはないのかよ。
歩き出したら俺の手首を藍斗が突然掴んできた「えっ?」って振り向いたら
「混んでるから」
藍斗はそのまま俺の手を握って歩き出した。
俺は顔に熱が集まる。
「藍斗…手…知り合いいるかも」
「これだけ人がいるんだ、誰も気にしないだろ。それに、こんなの学校でもやってたろ。」
ふと竹井さんに前言われた言葉を思い出した。
[蒼井君、幸太郎くんのこと本当に大事にしてるんだなって思う。]
そうだ。よく考えたら藍斗はずっと俺だけを見てくれてるんだ。
あの時はなんとも思わなかったはずなのに…変わったのは俺の方なのかな。
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