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作業
各チームが作品を良くしようと熱が入っていた。
ダンスチームには小道具作りも含まれているため、ダンスと作成でほぼ教室を占領しており、映像チームはコンピュータ室に籠ることもあれば、まめに教室を訪れて細かくタイミングやイメージにズレが出ない様に打ち合わせする。
俺たち看板チームはというと、今は多目的室に缶詰め状態になった。
俺たちは2枚の看板を作らなくてはならなくて、1つは大看板。
横は4メートル近くあり、かなり場所を取るため教室での作業が困難になった。
もう一つは模造紙サイズ程度のなんだけど、俺たちは見世物の方に合流せずに看板作りに専念することに決まった為、もっと凝った看板にしようと千切り絵にすることにした。
その辺はクラスごとに戦略的に決めて良い事になっているのだ。
ここのとこ放課後も学校に残ることができるギリギリまで作業するから、俺と藍斗がちゃんと話ができるのは昼休みくらいだ。
寂しいけど、藍斗が女子と話してるとこを見たくない。
こうやって隔離されているのは助かったかもしれない。
「幸太郎君、ここ丁寧に仕上げたいから筆細いのに替えた方がいいよ」
「うん、わかった」
「戸田!ここはもう少し色くすませたの使って!」
「なんかあいちゃん俺への当たり強くなーい?」
ふふってみんな顔を合わせて笑う。
意外と俺たち看板チームは上手くいっていた。
デザイン、下書きをほぼ終えてくれた女の子たちは、今では職人ばりの貫禄があり、細かい指示を俺たちに与えて着実に作業を進めていく。
それはちんぷんかんぷんな俺たちには非常に助かって、文句なんか滅相もなく言われた通りを目指して努力した。
戸田の差し入れは女の子たちから好評で
「俺たちコンビニ行くけど、喉乾いてなーい?」
って毎回女の子たちを気遣う。
そんなやり取りが繰り返されるうちに、俺たちはチームワークが取れた良いチームになってきた。
ここを訪れる人は少ない。
委員長の竹井さんが「上手く行ってる?」ってたまに様子を見に来てくれる他には
「あ、るりちゃーん!」
「正樹ー!ちゃんとやってるのぉ?」
戸田の新しい彼女が通りがけによく顔を出す。
途端にみんなの表情が消える。
うん、わかる。
戸田は見つけた途端に仕事を投げ出して行ってしまうし、るりちゃんの腰に手を回して、キスでもしそうな顔の距離で話し始めるからだ。
ボソっと1人が「外に【不純物持ち込み禁止】
の張り紙はるか…」と言ったのに全員合意
した。
つい1、2ヶ月の付き合いなはずなのに、あの2人は俺と藍斗よりもずっと先にいる様な気がした。
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