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勘違い
「終わったぁぁぁぁあああー!!!」
ちぎり、ちぎって、ちぎりつくし、俺たちは学校祭の5日前に絵を完成させることができた。
メインでデザインを考えくれた子は若干目元が潤んでて、それを見て皆んな更に感極まる。
調子に乗った戸田が「泣くなら俺の胸で泣いていーよー」
ってみんなに抱き付こうとするが、結局みんなから蹴飛ばされて
「幸ちゃん俺つらーい!」
って俺の胸に泣きついてきた。
俺はあきれて「はい、はい」と流した。
作業の終わったのを聞きつけてクラスからも数人かけつけてくれた。
皆んな口々に「すごーい」「よくこんな細かくやったなー」と言ってくれるのが歯がゆい。
祝福ムードで盛りがっていたら、俺に抱きついてた戸田がぼそっと
「あ、やばい。怒っちゃってる」
と耳元で言うから何かと思って振り向くと、藍斗が真顔でこちらを睨んでいた。
慌てて戸田のこと引き剥がそうとしたけど
「あーこれ、なかなか怖いな。蒼井君目力強すぎるね。おっ!こっちに近づいてきたよ。」
戸田は面白がってるのか、ずっと小声で実況中継するだけで離してくれない。
戸田がふざけてるのは説明すればきっとわかってもらえる。
でも今この空気を俺たちの所為で壊してはいけないと思って
「戸田、今ケンカみたいなのしたくないから、頼むって」
と俺が小声で言うけどそれでも剥がれない
「そうだね。このままだと殴られちゃうかも。逃げなきゃ」
そう言ってすぐに、わざと大声で
「ああ〜幸ちゃん本当に疲れたね。お菓子買ってお祝いしないとっ!」
って言って、俺の手を引いて走り出した。
藍斗の横を通る時に藍斗が俺に手を伸ばしたのが見えたけど
「皆んなの分も買ってくるからねー!」
と更に勢い良く引くものだから俺たちには届かず、藍斗がまだこちらを見てるのが背中で感じた。
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