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真意
「じゃあ、何がしたいんだよ…」
戸田がそう思ったなら、そう俺に直接言えばいいじゃないか。
わざわざ藍斗を怒らせる様なことをされるのは困る。
「うーん、なんていうか…蒼井君に嫌がらせしてやりたくなったんだよね」
「…は?藍斗がお前に何したっていうんだよ。」
「まぁ、ちょっと落ち着いて聞いて。
今ってさ、クラス間の行き来って自由なんだよ。もっと言えば学年の行き来も制限ないから文化祭が近づくにつれてカップルって増えていってるの。」
言われてみたればそうだけど…?
「じゃあ、俺たちはって言うとさ、みんなと引き離されて6人だけで黙々と作業してたわけじゃない?」
「でも藍斗が全部決めたわけじゃない」
「確かにそうだよ。でも蒼井君は常に話し合いの中心にいたよね。
俺は2人に勘づいた状態で聞いてるからさ。俺からしたら最もらしい理由をつけて、幸ちゃんを隔離したいんだなって感じに見えてたよ。
2人が一緒に作業するのはどっちにしても難しそうだからね」
…否定できない。あんなに頭の切れる藍斗がひたすら紙ちぎってるのは変だし、俺がパソコン巧みにつかうのは無理だ。
100歩譲って2人でダンスだけど、違和感がすごい。
「じゃないとあのヤキモチ焼きがこんなに幸ちゃんを放っておけないよ。見たでしょさっきの目。幸ちゃんまだまだ苦労しそうだよね。」
「お前も巻き添えくったから怒ってるのかよ。」
「ううん、俺はもうるりちゃんがいるし、看板作りは楽しかったよ」
「じゃあなんで…」
「うーん、情が移ったっていうのかな?
幸ちゃんと仲良くなったから。幸ちゃんが悲しい顔してたら俺もこころが痛くてね。それでいて皆んなの中心にいるくせに、俺なんかにも嫉妬してくるあいつが憎たらしくなったからやってやった」
「俺のためってこと?」
「ちがうよ。俺がやりたいからやったの。
現にこれから大変なのは幸ちゃんの方だし」
そうだ。まだ藍斗はきっと怒ってる。
戸田の意図がわかって気持ちは落ち着いたけど、藍斗の機嫌はしばらく悪そうだから憂鬱だ。
「蒼井君なんか放っておけばいいよ。あいつ意外とわがままだもん。困った時はいつでも俺がいるし〜」
それはそれでもっとややこしくなりそうだと思う。
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