警戒

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警戒

 いつもの直登との登校時間。 今日、俺は決意してることがある。 直登に俺と藍斗の関係を報告しようと思う。 実はそれは前々から俺の中で引っかかっていた。 直登はちゃんと彼女ができたのを一番に教えてくれた。 そして俺が「彼女とどうなんだ?」と聞けば、照れ臭そうにいつも話してくれたのに、俺は何一つ直登に明かしていない。 それは直登を裏切っている様な気がしてきたんだ。 直登は間違いなく、俺の親友だ。 だからこそどんな反応であれ報告すべきだと思った。 「なぁ…直登」 「ん、どうした?真面目な顔して」 「俺…今藍斗と付き合ってるんだ。」 一瞬俺たちの時が止まった気がする。 直登はポカンとした顔してるし。 俺は直登がこれからどう反応するか待つべきだろうか…? 「付き合ってるって、恋人同士って意味だよな?」 「うん」 「……」 「引くか?」 男同士だし。 それも一応覚悟はしてきたつもりだ。 「いや、実は俺なんとなく気が付いてたんだ。」 え、うそ!? 「だから心配すんな。全然引いてないから。まさか今カミングアウトされると思ってなかったからびっくりしちまった。」 直登はそう言って俺に微笑みかけた。 「どうしてわかったの?」 「どうしてっていうか…蒼井はもう最初からあからさまだったから、ずっと幸太郎のこと心配してた。」 「心配?」 「うん。あいつどうやってもお前のこと捕まえそうな感じで。幸太郎はあいつのこと信用してるみたいだったし大丈夫かなって」 いろいろ驚いた。 バレてたのも、心配されてたってのも。直登より俺の方がもしかしたら今日は予想外だったかも。 「はは、なんか藍斗ヤバい奴みたいだな」 「あいつけっこう紙一重だぞ」 「え」 「好きでもあんまり踏み込ませ過ぎない方がいいかもな」 俺が冗談みたいに言った言葉に、存外直登は真面目にそう返した。 直登はふざけた奴だけど、実は結構頭が良くて周りをすごく見ている。 でもどうして直登が藍斗をそんなに警戒してるのか俺はピンとこない。 「でも最近は直登も藍斗と普通に話す様になったじゃん」 「幸太郎があいつといて楽しそうだったしな。あいつも俺たちとも居れる様に努力してるみたいだし。だったら俺も仲良くしてみよっかなって」 「じゃあ、一緒に登校するうちに俺たちのことわかったのか」 「いや…2人が付き合ってるのかと思ったのは…… ちょっと男にこんな言い方変かもしれないけど、幸太郎がどんどんきれいになってる様な感じがして…ああ、そういう関係なのかなって思い始めた」 すごく言いづらそうに直登はそう言うけど、戸田に散々エロいだなんだ言われて俺は慣れてるから安心しろ、直登。 というか、やっぱり俺もわかりやすいんだな。 「幸太郎は蒼井と付き合って楽しくやれてるんだよな?」 「うん」 「ならいいんだ。あいつがお前困らす様ならいつでも相談しろよ!俺たち親友だろ。」 親指立てて直登がニカッと歯を見せて笑った。 「直登…」 直登に打ち明けて本当に良かった。 俺はもう最高の親友に感動してしまって、目を潤ませながら直登に抱きついた。 「おいおい、本当に幸太郎は子供みたいだな」 そう笑いながら俺の頭を直登がくしゃくしゃと撫でる。 そういえば、こうやって直登が俺の頭を撫でてくれるのは、ずいぶん久しぶりなんだと俺は思い出した。
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